真 夢人 日記

心理学、哲学、脳科学、宗教に関心があり、それらについて自分なりにまとめたものをこのブクロで発信していきます。

欲求階層説と個人と国家

[下流社会の評価基準は何]
下流階層、下流社会、下層階級などという言葉がある。この評価の基準は何だろうか。おそらく経済面を基準にしたものだろう。そうなれば、私たちは経済を基準に据えて考えていることになる。しかし、私たちは単にエコノミックアニマル(経済活動をする生き物)なのだろうか。
[欲求は段階的な階層構造を形成]
◎"欲求階層説"という言葉がある。アメリカの心理学者、マズロー(1908-1970)が唱えた理論である。割合有名な理論なのでご存じの方も多いでしょう。彼は、人間の欲求は、低次の欲求から高次の欲求へと、段階的な階層構造を形成していると述べた。
参考資料→「悶々とした気分から脱するための“パワー・ワード” 「自己実現の欲求」を明確化しよう」
[欲求は低い段階から高い段階へと上昇]
◎その欲求階層は、低い段階から、1)生理的欲求→2)安全欲求→3)社会的欲求→4)自我の欲求→5)自己実現欲求と、順次高い段階へと上昇する。
[生理的欲求と安全欲求]
◎ 蛇足とは思うが、それぞれについて簡単に述べる。生理的欲求は、主に生きる(中心は食欲など)ために必要な欲求である。次の安全欲求は、生存を保証してもらう安全・保護を求める欲求である。つまり生き続けるための欲求。赤ん坊に、これら二つの欲求がなければすぐに死んでしまうだろう。
[社会的欲求]
◎このような欲求が満たされることによって、個人の存続が保証される。そうなれば、次に来るのが集団の中にうまく位置づけられるように求める、それが三番目の社会的欲求である。先の生理的欲求と安全欲求との二つがどちらかといえば、家庭内で満たされることが多い。
[家庭からさらに大きな範囲である社会へと進出]
◎人間は家庭内では収まりきれない、社会的動物でもある。ニホンザルなどの、集団・群れを形成する動物は一人(匹)に引き離されると大きなストレスを感じる。家庭内に納まっている、家庭内で満足する存在ではない者は、家庭からさらに大きな範囲である社会へと進出しようとする。
[社会にも大きなストレスが]
◎人間は、社会的動物であるといえ、社会にも大きなストレスが待ち受けている。日々これストレスの固まりと戦わねばならないという状況下でもある。それ故にか、家庭内引きこもりも増加している、空襲時に防空壕に逃げ込むように。
[個性を発揮し正しく評価されたい欲求]
◎生き続けることが保証され、安全が確保される集団(家庭から社会)内にうまく位置づくことができれば、その後に現れるのが自我の欲求である。この欲求は、社会の中で自分が正しく評価されたいという欲求である。個性(個人の能力)を発揮したいという欲求である。
[自我の欲求は精神的欲求]
◎私たちは、単に社会に居ればいいのではなく、そこで能力を発揮ししかも社会からそれに対する正当な評価を得たい。そういう欲求が自我の欲求である。このあたりからは身体的欲求というよりも、多分に精神的欲求でもある。
[漸成的発達段階]
◎話題を変える。心理学者エリクソンは、人間の発達を、8つの漸成的発達段階に分けた。各段階には固有の発達段階があるとし、それぞれの発達課題を、解決の成功と失敗によって示した。その葛藤(成功と失敗)を危機と呼んだ。解決すると、さらに上位の段階へと上昇し、失敗すると、そこに停滞する。両心理学者は同じように階層的上昇を認めている。
[自分の能力を最大限に発揮したい欲求]
◎最後の自己実現欲求は、自分の能力を最大限に発揮したいという欲求である。自我の欲求は、社会的評価を大きく受け入れる範囲内での能力発揮であるが、自己実現欲求は社会的評価を受けられるかどうかは想定されない。もちろん法を逸脱することはだめであるが。しかし、時には社会的範囲を逸脱することが、社会の発展につながっている。難しいところだ。この評価は後世の歴史が下す。
[国家の発展段階を推し量るのに役立つ]
◎この理論は、個人や国家などの発展段階を推し量るのに役立ちそうである。国家も個人と同様に、そして個人と同じように段階的欲求が上昇してゆく。さらに視野範囲が、個人だけから家庭へ、さらに集団・社会へ、さらにその社会を越え行く方向へと拡大する。
[戦後の日本の歩みと欲求との関係]
◎日本は戦後、文字通り、生理的欲求の満足のみに走った。その後日本の安全を外国(アメリカ)に求めた。自分自身で守れないのだから。国際社会での位置づけも、国連加盟などで得られている。その後経済面で能力発揮した。
[現在は文化面で能力を発揮]
◎これはエコノミックアニマルなどと揶揄された。さらにバブルとその後の崩壊で頓挫した。現在は文化面で能力を発揮し始めている。この後の世界進出が楽しみである。