真 夢人 日記

心理学、哲学、脳科学、宗教に関心があり、それらについて自分なりにまとめたものをこのブクロで発信していきます。

民主主義は良い主義なのか

[集団に秩序を]
◎人類は集団でしか生きられない。数千年かけて、全世界(あるいは人類)はその集団に秩序をもたらす方法をさまざまに模索し、試行錯誤してきた。そして、ようやく民主主義という方式を一番ましな(最善ではないが)制度として認め始めている。
[民主主義度を表す指標]
◎所で、今大きな話題になり、課題となっている、イジメの存在・不在は、その学級の、その学校の民主主義度を表す指標になるのではないかと思う。で、あらためて、民主主義とはどんな制度なのだろうか。
[個人と集団の対立軸]
◎民主主義とは、個人の人権(自由・平等・参政権など)を尊重しながらも、多数(集団)による意思によって、物事を決定する制度・原則である。ここには個人と集団という相反する対立軸がある。
[経過の民主主義]
◎"多数(集団)による意思で決める"とあるが、それは単純な多数決ではない。"単純な多数決"では、結論の正当性は"数の多さ"を根拠とする。民主主義的多数決では、集団の全員がひとりひとりが異なった意思(意見)を持ったうえで、対等な資格で、意思決定に加わることを大前提とする。結果の民主主義なではなく、経過の民主主義なのである。
[煮詰めてできた料理]
◎つまり、民主主義は、多数決によって最終的結論を出すけれども、その意思決定の前提として、多様な意見を持つ者同士が理性的対話をしながら相互譲歩(妥協)にたどり着くことをもって正当とする。さまざまな具材を鍋に入れて煮詰めてできた料理が民主主義である。一つの具材だけで作り上げた料理ではない。
[民主主義の実験場]
◎現在のような(議会制)民主主義にたどり着いた経過を見てみる。過去の民主主義(欠陥商品ではあったが)の実験場、ギリシアでは、扇動的な政治家の議論に一般大衆が流され(衆愚化し)ていき、民主制の(都市)国家(アテナイなど)は君主制・寡頭制の国家(ペルシアなど)に敗れて自壊した。実験は見事に失敗した。
[混乱から独裁政を生む]
◎このように、民主政治は、衆愚(考えず流される民衆)政治の混乱から独裁政を生む(乗っ取られる)欠陥があった。民主主義は、国民の資質・能力が向上(自己意見・自己責任)すればするほど、本来の機能が発揮できる政治体制である。ギリシアは時期が余りにも尚早であった。個性がまだ育っていなかった。
[議会制民主主義]
◎時代はずっと下って、現代の民主主義は、西欧の近代市民革命(フランス革命など)を通過することで諸国に伝搬した。ここで生まれたのは、近代市民社会の根本原理として受け入れられた議会(意思の料理場)制民主主義である。そこでは主権の根拠を、自由で同格な市民による合意に基づく社会契約(現在注目されているのがマニフェスト)に置く。
[生まれ育った全体主義とは]
◎"個人"の自由と利益を優先させる民主主義、と対置する"全体主義"は、"全体"の利益が優先される政治原理である。この全体主義が生まれ育った経緯を示す。
[社会問題の放置]
◎当時の自由主義国家は、産業革命後19世紀後半から顕在化した、さまざまな社会問題(労働・住宅・貧困問題など)に対して、効果的な対処政策を講じられなかった。自由を旗印とする民主主義国家は個人の自由に踏み込まず、結果的に深刻さの倍加する社会問題を放置した。
[合法的に全体主義が誕生]
◎金持ち層(ブルジョワ階級)の牛耳る議会は、中間層貧困層など庶民の生活苦に目を向けようとしなかった。こうしたブルジョワ民主主義の"欠点"への批判から、多数を占めた中間層貧困層の支持を得て合法的に全体主義が誕生した。
[国家目的は公共福祉]
◎どのような主義であれ、国家の目的は、公共の福祉である。国民の一部(金持ち層)や目の前にぶら下がる利益でなく、国民全体の、未来を見据えた永続的な利益を追求するべきであろう。
[国家の積極介入]
全体主義が示した治療処方は、今までの国家が積極介入してこなかった、社会・経済・文化の領域の隅々までへの、権力の強権発動であった。その結果の、非効率な選挙や不毛な議会制度の廃棄処分であった。その後の、自分好みの制度創設であった。
[個人の自由を大幅制限]
◎こうした政治体制によって、それまで過度に尊重されていた個人の自由を大幅制限して、国家全体の利益を優先させようとした。結果、天秤は個人尊重から国家利益優先へと大きく傾いた。
[両面を持ち合わせる]
◎それは、戦後すぐの日本が経験したような、国家による管理のために、国家政策として集約的に工業・産業を大規模に育成させるなど効率が良い面がある。その一方で、今まさに日本が苦しんでいる組織・制度の硬直化・金属疲労を招来するという非効率な面の両極端として現れる。
[両主義とも欠陥商品]
◎このように民主主義にはさまざまな欠陥がある。しかし、その反省から生まれ出た全体主義国家体制がことごとく失敗に終わっているところを見れば、やはり全体主義にも大きな欠陥を抱えていると言わざるを得ない。
[過去の日本へ反転回帰]
◎阿倍首相率いる政府は民主主義の更なる推進よりも、全体主義(国家利益優先)の方へ大きく舵を切ろうとしているように思えてならない。過去の日本へ反転回帰しようとしているように見える。