真 夢人 日記

心理学、哲学、脳科学、宗教に関心があり、それらについて自分なりにまとめたものをこのブクロで発信していきます。

道州制移行が現実味を帯びて来た

[道州制への移行]
◎前回"市町村合併から道州制へ"、と題して、府県制から道州制への移行する目的などについて書いた。今日は道州制特区推進法案が通過可決される見通しが強くなったので、それについて、もう少し深く掘り下げてみたい。
[道州制特区推進法案可決]
◎"道州制特区推進"法案が2006年11月22日、衆院内閣委員会で与党の賛成多数で可決された。この法案は、北海道をモデル事例として、国から地方に権限を移譲するための枠組みを定めたものである。
[全国的な道州制論議へと導く]
◎この法案は、いずれ衆院本会議で可決された後、参院に送付され、今国会で成立する見通しである。安倍政権がこの法案を推し進めたのは、北海道州制特区の設置を突破口として、全国的な道州制論議へと導くためであろう。
[道州制特区推進本部を設置]
◎法案の中身は次の通り。国は必要な財源とともにいくつかの分野の権限を北海道に移譲する。政府(首相を本部長として)は"道州制特区推進本部"を設置する。そこで特区内での特例措置などを盛り込んだ基本方針を定める。今後、北海道以外に、三つ以上の都府県が合併した場合、優先的に権限と財源を移譲する。
[2006年道州制導入論を答申]
◎このように、早速と法案が成立見通しとなったのは、この道州制の導入論が、今回首相に立候補した、安倍氏も麻生氏も提起していたからである。すでに、首相の諮問機関・地方制度調査会が2006年2月、道州制導入論を答申している。お膳立ては出来上がっていた。
[廃県置州]
◎何故、政府は道州制を導入しようとするのか。それは"小さな政府"構想と対(ツイ)をなすからである。現在の47都道府県に代わって、9〜13地域程度の道州への"廃県置州"である。それによって、国と地方の行政制度は、国→道州→市町村という3層構造となる。
[中央に大きく依存]
◎更なる理由は、現在の県は小さすぎて、国と対等にわたり合う関係とはなりえない。その結果、中央と地方の格差解消ができずに、中央に大きく依存する、中央集権体制から脱却できず、地方分権地方主権は空言葉、絵空語に過ぎない。
[地方分権政策]
安倍晋三首相は、"道州制"の導入を、地方分権政策として掲げている。多くの権限(教育や税制)を本当に道州に移行すれば、日本もアメリカのように半独立の地域国家が分立することを意味する。"全国統一の呪縛はいつまで続く"で書いたようにすばらしいことだと思う。
[国家管理を強める方向へ]
◎とはいえ、国家の概念を強く打ち出している安倍首相は、その具体例が愛国心や国家管理を強める方向へと向かう教育基本法の改正を強く推進している。故に、地方分権政策と矛盾すると思えるのだが。
[地域国家]
◎大前氏は、競争力の高い地域国家を提言する。地域国家とは、人口50万人〜1000万人(大阪府は900万人弱)ほどで構成される、経済政策の最小単位(国,あるいは中央政府から大幅な権限委譲を受けた自治体)を指す。さらに次の条件を満たすもの。
[地域国家の条件]
◎国際空港、国際貨物を扱える港湾、幹線道路などの、充実した域内交通インフラ。良い学生を惹きつける、高度に訓練された働き手を輩出する地域基幹機能を持つ大学と研究施設。国外からの投資の受け入れ。働き、子育てに魅力的な生活環境。
[科学技術・産業を競い合う]
◎そのような基盤を保持する、地域("関東州"、"北海道"、関西州"、"九州"など)が、カリフォルニア、中国、インドなどと、科学技術や産業を競い合う。当然、道州長は、外国と対等に渡り合う高い外交能力を要求される。
[世界に向けた特色]
◎そのために、地域ごとの、世界に通用する(世界からの関心を引く)ほどの特色が求められる。世界の企業は特色・魅力のない地域に投資して製造・生産・研究開発拠点を置こうとはしないだろう。そういう面では、中国は大変成功している良き実例(安くて質の高い労働力という魅力)を提供している。
[流ちょうに日本語を話す中国人]
◎例えば、"Dell"は、日本人向けのコールセンターの拠点を中国に置いている。私も修理依頼でDellに電話したとき、電話口に出たのは日本人ではなく、少し訛りがあるが、流ちょうに日本語を話す、中国人であった。
[フィリピン看護師や介護士]
◎また、フィリピンは、世界各国へ1万数千人の看護師を派遣している。日本での仕事を希望する看護師は多い。日本とフィリピンの自由貿易協定(FTA)交渉が2004年に決着した。これによって、日本でのフィリピン看護師や介護士の就労が可能となった。
[道州は小さな国家]
◎何故こんな例を出したかというと、フィリピンを日本のどこかの道州(例えば北海道)に置き換えられるからである。道州は小さな国家としての機能を持ち、国内だけではなく、外国とも渡り合わなければならない、現状を打破するには。府県同士が、国内の小さなパイを奪い合う時代ではない。
[機能をどんどん創造]
◎いや、逆発想すれば、今まで持っていなかった機能をどんどん創造して、外国と交渉する。今まで、中央にしか向いていなかった顔を世界中に向けていける、向けていかなければ生き残れない状況に追い込まれている。
[巨大な道州にさえ発展していける]
◎また、逆発想すれば、中央(政府・東京)を凌ぐ巨大な道州にさえ発展していける道が開けたということでもある。それを左右するのは、道州長の手腕であり、特色創成であり、世界に伍する各種基盤・制度である。前回、"合併の背景に大学間競争の厳しさ"で述べたが、その基盤に大学を据える、知的生産拠点として。そのためには、小さな大学は合併すべきであろう。
[実現するためには]
◎しかし、これが実現するためには、政府・安倍政権が、単に(国家予算削減のため)"小さな政府"を作りたいだけだという、消極的な考えしか持っていないならば、つまり、金は出さないし、権限も差し出さないというナイナイづくしの道州制では、地方はただこのまま失速墜落を待つだけの、エンジン停止した飛行機に過ぎなくなる。