真 夢人 日記

心理学、哲学、脳科学、宗教に関心があり、それらについて自分なりにまとめたものをこのブクロで発信していきます。

"Winny"開発者の有罪判決に思う

[ファイル交換ソフト]
ファイル交換ソフト"Winny"(開発者=元東大大学院助手、金子勇氏)について、京都地裁は"技術は有意義"だと認めたものの、開発者に罰金刑を言い渡し、彼の行為は"独善的で無責任"だと戒めた。
[著作権法違反ほう助]
◎彼の行為に付けられた罪名は、"著作権法違反のほう助"である。"ほう助"とは、"実行犯以外の行為で犯行を容易にする行為"である。
[有意義と評価]
◎しかしながら、裁判所は、"ウィニー"(Winny)自体は、"さまざまな分野に応用可能な有意義なもの"だと評価した。よい点と悪い点との両方を掲げている。
[科学の発展と社会的責任]
◎"科学者は中立である"といえる時代はもうとっくに終わっているのではないか。科学者といえども、人間であり、社会人である。社会的責任というものも同時に担ってほしい。科学の発展という名目で、自由に原子爆弾を創る時代は終わった。
[有意義な技術発明に有罪判決]
◎私自身はそのソフトを使っていないし、恐ろしそうなので使う気もない。しかし、"Winny"はすばらしいソフトだとの評価も高い。特に、理系階層には支持者が多いような気がする。応用可能な有意義な技術を発明したのに、有罪判決ではたまったものではないのだろう。
[情報漏洩流出]
◎他方、"Winny"使用による、防衛機密や捜査情報などの秘密保持義務ありの情報漏洩流出が後を絶たない。また、違法コピーによる著作権侵害もものすごいものがある。しかし、弁護側は、"自動車メーカーは速度違反のほう助になるのか"、とまで法廷で訴えていた。
[矛盾的自己同一]
◎何事にも、何ものにも、良い面と悪い面の両面を持つ矛盾的自己同一である。"Winny"もその例から外れることはできない。
[包丁からすばらしい料理]
◎例えば、包丁を取り上げる。それは料理をするのに必需品であり、それを使用することによって、すばらしい料理も生まれる。
[包丁で命を奪われる]
◎他方、包丁で命を奪われる人もいる。だがしかし、それを持って包丁の禁止が叫ばれたこともない。何故か?。それは包丁の持つ良い面と悪い面とでは、良い面での使用が圧倒的に多いからである。
[悪い使用への歯止め]
◎さらにまた、不用意に、つまり、本来的な使用でないのに、持ち出し、持ち歩きしていれば、罰則が適用される。悪い面での使用への歯止めも少しはある。この辺(良い面の使用と悪い面の使用の天秤)が社会的常識ではないだろうか。
[社会に影響]
◎"Winny"開発者が、それを開発する自由はある。が、それを社会へ公開した時点、社会へ放し飼いにした時点から、社会的責任も負うという了解を持ったことになる。それが社会一般の常識である。個人の行為は、影響範囲に大小あるが、必ず社会に影響をもたらす。
[社会的責任]
◎社会的責任を負いたくないならば、それを公開してはいけない。公開してから、公開を後悔するのではもう遅い。その認識が彼にはなかったのではないか。彼にはたぶん、それはソフトを使用する個人の責任範囲だと考えているのだろう。
[社会全体で責任を負う]
◎先ほどの弁護側の、"自動車メーカーは速度違反のほう助になるのか"は、社会は、自動車を受け入れた上(個人使用から社会的責任へ)で、速度違反行為に対して、自動車メーカーへその責任を負わせるのではなく、社会全体でその責任を負おうと決断した、といえる。
[違反行為抑制を実施]
◎つまり、社会内では、自動車受け入れ後に、速度違反行為の抑制を実施している。警察による速度違反の取り締まりとその罰則適用や社会啓発などによって、速度違反行為の抑制を進めている。
[社会的合意の形成]
◎例えば、日本では所持を禁止されている拳銃は、アメリカでは許可制ではあるが、認められている。これは、つまり、社会的合意の形成である。どちらを取るのかという選択の問題である。受け入れなのか拒絶なのか。
[社会的認知]
◎"Winny"の最大の弱点は、いったん漏洩流出した情報は取り返しが効かない(回収困難という)ことだろう。それへの大幅な改善版が出されるべきだろう。それによって、社会的認知という合意の形成を計るべきである。
[科学者の独善]
◎それをしないで、良い面だけを高らかに掲げて、違法との判決を批判するのはやはり科学者の独善ではないか。技術は中立であるかもしれないが、社会的使用の段階ではもはや中立はあり得ない。科学者が、科学者だけが是非を決めるべきではなく、社会全体の問題として提議すべきである。個人の問題から社会の問題へと切り上げるべきだろう。
[検証を通過]
◎他方、この判決によって、技術者が、委縮して有用な技術開発を止めてしまうという指摘もある。これに対しても、独善ではないかの検証を通過する必要があると思う。これが企業が発売したソフトであれば、厖大な訴訟へと発展する可能性もある。逆の面の萎縮もあり得る。それを阻止する(個人の問題からみんなの問題化する)意味でも検証が必要だ。
[さまざまな視点からの事前調査]
◎そのような自分や社会への不利益を事前に検証するシステムがあって当然ではないだろうか。企業であれば、発売前にかなりさまざまな視点からの事前調査がなされるはずであるのだから。それを経ないならば独善の批判は受けるべきだ。