真 夢人 日記

心理学、哲学、脳科学、宗教に関心があり、それらについて自分なりにまとめたものをこのブクロで発信していきます。

何かをすることは何かをしないこと

[大学での個人懇談に親同伴]
◎先日(2007/1/5)の産経新聞(紙版)の記事を見て、感じたことを書きたい。その記事内容とは、大学での(成績や就職に関して)個人懇談が親同伴で行われる(もちろんすべての大学ではない)というものだった。
[主体的に選び取る実存]
◎まず、今日の題、"何かをすることは何かをしないこと"は、一言で言えば、"選択"である。私たちは刻々と選択をし続けている。自ら選び取ることを"実存"という。与えられたものを受け取るのではなく、自ら主体的に選び取る。実存とは主体性を生きることだ。
[何を選び取るかで個性]
◎誰でもそうだが、一度にいくつもの事柄はできない。世の中にある限りない事柄の内で、たった一つを選び取りながら生きている。何を選び取るかで、それぞれの個性が鮮明となって行く。動物のようなある特定の個性に収れんしないゆえんである。
[動物は本能が自動的に選び取る]
◎これは動物には許されていない特権でもある。動物の場合、本能が自動的に選び取ってゆく。人間は本能を乗り越えた時点から、意識が優位となって生きる存在となった。その結果選ぶ自由を獲得したのだ。しかし、それは逆から言えば、選び取る義務が生じた。
[他のすべてを捨て去る]
◎話を戻す。"何か(A)をすることは、何か(A以外のすべて)をしないこと"である。一つを選び出すということは、他のすべてを捨て去るということである。そこから人間にしか感じ得ない後悔という苦しい感情も生まれ出たのだ。
[何を選んでも完璧と言い難い]
◎それで、先ほどの記事の話に戻る。親が子ども(大学生)の個人懇談に同伴するという行為をすることは、他の事柄・行為を捨てていることになる。もちろん、何を選んでも、他のものを捨てることだから、何を選んでも完璧、完全、最良とは言い難い。
[選ぶ練習を子どもにさせる]
◎では、子ども(大学生)の個人懇談への親同伴に対して、何故こういう題(何かをすることは何かをしないこと)を提示したかと言えば、選ぶ練習を子どもにさせて行くべき時期がもうとっくに来ているのだと思うからである。
[試行錯誤で身につける]
◎大学生なら、自ら選び出す、選び取る練習をすべきと、実存的生き方をすべき時期なのだ、と思うからである。何を選び、何を捨てるかの感覚(嗅覚)は、自ら試行錯誤しながら身につける以外に習得の方法はないだろう。言葉による指導で学び得るものではない。
[親が選び取る]
◎しかし、この記事から判断すれば、いまだに親が選び取ってあげていると感じる。これは失敗の可能性は少なくなるかもしれない。が、親がいつまでその能力を発揮できるかである。親が"大学を卒業して就職して"という経験の持ち主であれば、子どもよりもより良い選択ができるかもしれないけれども。
[就職してからもやはり]
◎であったとしても、就職してからもやはり親が子どもの会社に同伴して子どもに成り代わって選択をしてあげてゆくのだろうか。そこまで行けばもうマンガである。でも、そこまでしたいと思う親もいるだろうが。
[会社は社員教育に苦労する]
◎これは会社にとってはたまったものではない。子どもを雇ったのであって、親を雇ったのではない。こんな子ども(従業員)であれば、会社は社員教育に苦労するだろう。今は即戦力を期待する時代であるというのに。子どもを教育するために雇ったのではないのだ。
[本番前に下準備が必要]
◎何かを本番でする前に、下準備が必要である。その下準備をいつするかである。このような親は、子ども自身が選び取るという訓練をさせてこなかったといえる。就職してからというのでは会社がかわいそうである。それを見抜けなかった会社の責任だといえばいえるが。
[少子化核家族化・家事の電化]
◎今、このような子どもが多くなっている。これは少子化核家族化、家事の電化・自動化の影響であろう。つまり、親に子どもの世話をする時間が有り余ってきたのだ。別の言い方をすれば、子どもへ干渉する時間がたっぷりとあるのだ。
[干渉を受け入れる]
◎子どもの方でも、そのような自分への世話・干渉をうるさく感じずに自然に受け入れてしまっている。優しい子ども達がずいぶんと増えてきた。精神的筋肉を体に巻きつけていない。"自分のことは自分でするからほっといてくれ"と、タンカが切れない優しさを持つ。そのせいか、体つきも一昔前とはかなり違ってきた。
[跳ね返す力がない]
◎このことが、ニートやフリーターや不登校や家庭内閉じこもりの増加の原因ではないだろうか。いろんな意味で、跳ね返す力の減少である。跳ね返す力がないが故に、最初から束縛する相手に近づかない、距離を保つ。
[親が子離れしない]
◎これは親が子離れしないことが大きな原因としてあるように感じる。親が子離れしない原因は、親には子育て以外に生き甲斐がないという事実がある。つまり、子どもを取り去れば親には何も後に残らないのだ。だから、いつまでも子どもにしがみつく。幼子がぬいぐるみにしがみつくように。
[子どもの問題は親の問題]
◎かくて、子どもの問題は親の問題へと帰り着く。政府は子どもの教育だけでなく、大人に対しても生涯教育を強く推進してもらいたいものである。子どもを大人に成長させられない親に対して、親教育を教育基本法に盛り込んでもらいたい。