[筋書きのないドラマ高校野球]
◎今年は高校野球にとんと目が向かなかった。何故だろう。とはいえ、逆転満塁ホームランは記憶に残った。筋書きのないドラマに感激した話を書く。
[不利な立場の公立高が優勝]
◎また、優勝校が、公立高校であったことも、大きな話題となっている。効率は私立と違って、予算や設備などさまざまな面で不利な立場に置かれる。それが数々の私立に競り勝ちながらの優勝である。凄いの一語に尽きる。
[一心不乱の動作に気持ちが洗われる]
◎やはり高校野球はすばらしい。一心不乱の動作に自分の気持ちが洗われる。ずいぶん垢が落ちたことだろう。
[胸の熱くなる思いを味わった]
◎テレビで見る、ありふれた筋書き(結末が見え見え)で、主演俳優の人気に全面的におんぶする、貧相なドラマを見るよりは、はるかに心動かされるさまざまなシーンに胸の熱くなる思いを久しぶりに味わった。
[感動をありがとう]
◎本当に有り難いことだ。サッカーの世界大会で、いろんな人が、"感動をありがとうと言いたい"という言葉を使うのを、白々しい言葉だと不愉快さを感じていたが、使う人はやはりしみじみと感じて自然に出てきた言葉なんだろうと、今日は実感した。
[メイクドラマ]
◎元巨人軍長嶋監督が、"メイクドラマ"というすてきな言葉を監督としての現役時代に使いました。元々は"大逆転を演じる"というような意味だったそうですが、私はそれを、"感動を与えるすばらしい舞台を作り上げる"という意味で使いたい。英語では余り良い意味では使わないようだけど。
[背後でさまざまな黒子さんたち]
◎あの試合は"メイクドラマ"だった。感動的な舞台を見ると、俳優の演技のすばらしいさと脚本の見事さを感じる。しかし実際にはその背後でさまざまな黒子さんたちの一生懸命に一つのドラマを作り上げる努力があってこそである。
[さまざまな係さん]
◎黒子たち。ロケ地を探す人、小道具さん、照明さん、衣装係さん、メイクさん、BGMを挿入する人々、編集さん、音響(録音係?)さん、記録係さん、広告集めさん、資金(会計)係さん、などなど。
[舞台には前景と背景]
◎舞台には前景と背景とがある。もちろん前景はそこで演じる俳優･役者である。野球というドラマでは選手たちである。しかし全員が舞台の上で演じられるわけではない。それができないことを挫折と見るならば、前景に立てずに背景に甘んじなければならない人々の方が圧倒的に多い。
[俳優にばかり目がいく]
◎しかしどうしても私たちは舞台上の俳優(前景)にばかり目がいってしまう。これは自分を投影しているからだろう。つまり、そこに俳優を見ているのではなく自分自身を重ね合わせている。これがドラマの役目の一つなのだからそれでいいのだろうと思う。
[つらい悲しい体験が背景を見させる]
◎しかし、役者だけではなく、背景までも見る、背景までもが見えるようになるには、さまざまな経験をくぐらなければならない。特につらい悲しい体験を。苦しい経験は人の心の視野を広げる。
[他人の体験を疑似体験]
◎つらい悲しい体験をしていない若い人たちはどうすればいいのかって。それならば、人の話を聞こう。そこで語られる、つらい悲しい体験を疑似体験しよう、出来れば追体験であってほしいが。追体験とは、その語られた体験をありありと思い浮かべてそこで感じられている感情までも感じ取ってゆくことである。相手の体験した感情を感じ取れてこそ心に浸み入る。
[自然界では人間は主人公的振る舞い]
◎話を大きく転回する。自然界では人間は主人公的振る舞いをしている。自然をあたかも自分たちのものだと言わぬばかりに傍若無人の振る舞いである。自然が億年をかけて築き上げてきた財産を人間は瞬く間に食い尽くす。
[庭の一本の木も自然を構成する一員]
◎庭の一本の木も自然を構成する一員である。大切な私たちの仲間である。私たちの奴隷では決してない。返って私たちを育ててくれる母なる大地の子である。
[一片一片が集まって風景全体が完成]
◎ジグソーパズルは、一片一片が集まって風景全体で絵柄が完成する。どの一つが欠けても完成しないのだ。すべてが同じ重みを持つ。
[皆々生きているんだ友達なんだ]
◎手の平を太陽に。すべての地球上の生物は太陽の恵みがあってこそ生きていられるんだ。ミミズだって、オケラだって、アメンボだって、皆々生きているんだ、友達なんだ。私たちの部下でも奴隷でもない。
[全景の隅々にまで等しく心が向く]
◎前景で展開することだけに目を奪われないで、全景の隅々にまで等しく心が向けられる人柄になりたいものである。しかしながら、私たちはともすれば自分を主人公だと思い誤る。そんな自我をみんな心に持っているんだ。
[主人公面する不快な自我]
◎気になることは、私がこのようなことを説教する、言い聞かせる気持ちの中にその不快な自我がでんと構えている、主人公面して。
