真 夢人 日記

心理学、哲学、脳科学、宗教に関心があり、それらについて自分なりにまとめたものをこのブクロで発信していきます。

全盲の男性入院患者(63)の公園置き去りから垣間見えるもの

[全盲の男性入院患者(63)を公園に置き去り]
堺市北区新金岡豊川総合病院の職員が9月、全盲の男性入院患者(63)を公園に置き去りにした問題が起きた。大きく報道されているが、それについて感じたことを述べたい。
[入院費用を滞納]
◎その患者は、糖尿病で約7年前から入院しており、生活保護が打ち切られたため、約2年間分の入院費用約185万円を滞納していたほか、病室の備品を壊したりなどした。
[6人部屋を1人で使用]
◎また、待遇などをめぐり、他の患者らとトラブルにもなっていた。看護師に大声を上げるなどのトラブルをおこしていた。最近は6人部屋を1人で使用していた。病院側では対応に苦慮していた。
[再三退院を勧めていた]
◎3年ほど前からは病状が安定したため、また介助者なしで日常生活を送ることができたため、病院側は入院治療の必要はないと判断して、「治療は必要だが通院で対応できる」と、再三退院を勧めていた。障害者施設を紹介したが、応じなかった。別の施設への転院を紹介する病院側の打診を男性は断り続けていた。
[内妻、引き取り拒否]
◎今年9月、内縁関係の女性[内妻](63)がいることがわかったため、病院側が、男性の引き受けを依頼しようとした内妻には、事前に連絡をも取らず、退院手続きを取って男性を病院の車に乗せて内妻宅へ送り届けた。所が、彼女からは「持病があって面倒をみられない」などと引き取りを断られた。
[生活保護や障害者年金を受けていた]
◎男性は全盲生活保護や障害者年金を受けており、毎月2万〜3万円の現金を内妻から受け取り、入院生活を続けていた。男性は、「入院費は内妻が生活保護費の中から支払ってくれている」と、思っていたという。
[公園に置き去り]
◎病院の職員は、内妻による引き取り拒否後、公園に置き去りにし、「男性が公園で倒れている」と、匿名で消防に通報し、救急車の到着を確認してから病院に戻った。男性は別の病院に運ばれ、現在も入院中である。
[保護責任者遺棄罪]
◎高齢者や幼い子ども、身体障害者、病気の人らを、保護する責任のある者が、その対象者を遺棄したり、生存に必要な保護をしなかったら、保護責任者遺棄罪に問われる。
[医療難民]
◎この問題は、退院しても行き場のない「医療難民」の深刻な実情を浮き彫りにした。今回読売新聞がもっとも医療現場での問題点を深く掘り下げていたので、その記事をほぼ抜粋引用し参考にさせていただいた。
[医療と福祉のシステムは確立していない]
大阪府医療対策課は、「あの男性の症状なら、20日間ほどで療養型病床や介護施設に移るのが通常」という。身寄りのない患者の行き場を確保する医療と福祉のシステムは確立していない。
[患者を公的施設で受け入れる制度はない]
堺市保健所にしても、「家族に引き取りを断られた患者を公的施設で受け入れる制度はない」という。
[受け皿のない患者の増加]
医療制度改革によって、長期入院の高齢者らを受け入れる「療養病床」の削減も進んでおり、今後、退院後にどこにも受け皿のない患者の増加が懸念される。
[医療や福祉のケアを横断的に行うシステム]
◎安藤高朗全日本病院協会副会長は、「社会的入院を送る人が退院後に生活するには、行政と地域が連携し、医療や福祉のケアを横断的に行うシステムが欠かせないが、日本では未成熟だ。低所得の高齢者や障害者が入居できる住宅の整備も必要」と指摘する。
[患者と行政側の谷間]
◎病院側も、「福祉事務所や保健所に何度も相談に行ったが対応してもらえなかった。私たちが患者と行政側の谷間だった」という。
[姥捨て]
◎表現が悪いが、トランプのばば抜きである。福祉事務所、保健所、保護者(内縁関係の女性)、病院、介護施設の中で、病院はババをつかんでしまった。そのババを処理したと言うことであろう。現代版の「姥捨て」である。
[攻撃は悪化を招く]
◎そういう事情を考えると、病院を攻めるだけでは何の解決にもならない。それどころか、以前よりも悪化するだけだろう。というのは、病院側は、それへの自衛手段として、患者の選別や拒否を始めるだろうから。
[裁判が医師志望の大きな重荷]
◎さらには、現に、産婦人科や小児科志望の医者が急激に減少しているのは、担当の医者が責められ続けた結果なのだから。医療事故による裁判が医師志望の大きな重荷になっている。
[妊婦の受け入れ拒否も頻繁]
◎また、妊婦の受け入れ拒否も頻繁に行われている。単に病院側だけを攻めるならば、このようなことが、妊婦だけでなく様々な患者に対しても行われ始めることは確実だろう。
[結び合わせる、病院ネットワーク作り、システムの構築]
◎望まれるのは、行政主体での、福祉事務所、保健所、保護者、患者、病院、介護施設を総合的、有機的に結び合わせる、病院ネットワーク作り、横断的システムの構築である。そういう面で、行政は、コーディネータの役割を担わなければならない。