真 夢人 日記

心理学、哲学、脳科学、宗教に関心があり、それらについて自分なりにまとめたものをこのブクロで発信していきます。

文化文明の進化論的な栄枯盛衰(2)

主役と脇役の転換は、オーバーラップ(年時の重なり合い)する。主役から脇役への引き下がり、逆に、周辺にいた脇役の主役への躍進などは、劇的に遂行されるわけではなく、長い時間をかけて変遷する、見かけ上はどれだけ劇的であってさえも。
ということを考えると、日本の政権交代は、小沢氏が読んでいたように、民主党の準備不足が、露呈して頓挫してしまったのもうなづける。
もしかすれば、民主党は、自民党の単なる反に過ぎなかったのでは、弁証法的に言えば。弁証法では、正(同じ政界に存在)⇒反(新しい生き方の模索)⇒合(過去から進化蓄積した手段・道具の取り込み)へと、到達して完成する。
織田信長によって終止符が打たれた、戦国時代は、1467年の応仁の乱か1493年の明応の政変から始まり、1568年の織田信長入京か、1573年に室町将軍足利義昭が信長によって追放されたのを終わりとする。
しかし、この革命は、古い体制を破壊した信長だけで完成したのではなく、その後に続く、豊臣秀吉徳川家康による、新しい体制の構築によって、完結する。
歴史を見ていくと、どうも革命者と実務者は同一人物では無理があるようだ。この二つは別の人間であるべきだろう。なぜなら、革命や現政権を倒すということは、戦乱のカオスの中で飛び抜けた戦略的な能力と迅速な判断と決断力、力強いリーダーシップを必要とし、血しぶきを浴びる覚悟が必要だが、実務者にとっては、むしろそういった能力は邪魔になる。むしろ、能力のある人間を選別し伸ばして、どう政権運営を行っていくかといった、長期的な視野と経済、経営能力が必要になる。引用from"革命者と実務者"
物事の展開や物語の文章などにおける構成は、起承転結を標準とする。これは、弁証法での展開、正反合とも符合する。起承=正、転=反、結=合であろう。
『栄枯盛衰は世の習い』は、宇宙の基本原理である。生物界では、進化とは、結果的には、環境変化にともなって、主役(時代の先端を華々しく進むもの)が次々に交代していく歴史であった。
仏教では、これを、この世の現実存在はすべて、すがたも本質も常に流動変化するものであり、一瞬といえども存在は同一性を保持することができない、"諸行無常"だという。引用(fromWikipedia)
例えば、初期には、海(水中)が、主役的環境だった。のが、酸素の発生(光合成によって酸素を生み出すシアノバクテリア[藍色細菌]の誕生)によって、宇宙からの有害物の防御シールドが形成された陸地が、主役的環境に躍り出た。
それまでは、陸地は生存不可能な劣悪な環境下にあった。例えば、原始地球においてはメタン菌によるメタンによって地球大気が暖められていた。しかし、今や、メタンは、メタンハイドレートとして、一躍脚光を浴びる存在へと変貌してきている。
注)その結果(?)、海(水中)での進化が停滞(固定化)したように思える。飛躍的な進化は、辺境地帯に限られるのだろうか。人間でも、動物でも、若者は大きく変化進化するが、成熟すると、それが止まるように感じられる。
つまり、環境変化にともなって、進化するグループ(人間的に言えば、不満分子たち、反旗を翻す者達)と、固定化するグループ(現状に満足している者たち)が存在するのかもしれない。
ほとんどを占める固定化グループは、自分たちが適していた元の環境へと引き下がる、退却することによって、その環境での適者生存者の位置を確保する。
進化とは、新しい環境により良く適した突然変異を獲得することで成し遂げられる。逆から言えば、進化を止める(固定化)とは、今まで適していた環境に居続けるためには、次から次へと生まれ出る突然変異を捨て去ることである。変化を拒否することである。
弁証法的に言えば、固定化とは、正にとどまって、反へと進まないことである。反へと進んだものの中から、合へと止揚を成し遂げるものが現れる。止揚するだけの能力のないものは、反乱分子としてしか評価されない。
主役を転覆させる段階から、新しい秩序を形成する段階へと持ち込む能力が要求される。秩序形成能力がないままに、破壊だけ起こすと、その後に長い混沌が待っている。
ドーキンスは、ミームの説明の中で、進化の条件として、「複製、伝達、変異」を上げた。同じ物を、複製、伝達し続けるのが固定化であり、そこに変異を取り入れるのが進化である。
変化の拒否には、もうひとつの方法がある。例えば、多細胞生物では、神経細胞、皮膚細胞、筋肉細胞など、それぞれ形状や機能の違う様々な細胞から構成されている。しかし、これらの細胞は全て同一のゲノムDNAを持っていて、ひとつの受精卵から細胞分化の過程を経てできあがったものである。
同じゲノムDNAを持っているのでどんな細胞にでもなれるわけであるにもかかわらず、それぞれの細胞が違ったもののになるのは、細胞によって機能する(変身するための)遺伝子(遺伝子発現)が異なるためである。
この遺伝子発現に重要な役割を果たすのが、ゲノムDNAのメチル化である。メチル化された部分の遺伝子は発現が抑制された、つまり「鍵がかかった」(封印された)状態となる。細胞の種類によって鍵のかかった場所(遺伝子の所在地)が異なっている。
これによって、何にでもなれる潜在的可能性を持つ細胞なのに、特定の細胞へと固定化される。
遺伝子発現を封印されていない(川上)段階の細胞を使うのが、再生医療である。そして、そこから特定の遺伝子の発現を促して、お望みの(川下)細胞群を生成する。
改変引用from細胞分化を決定するゲノムDNAのメチル化を認識する機構を解明
生物進化での固定化は、突然変異の拒絶によって行われ、細胞分化の固定化は、遺伝子発現の封印によって行われる。両者に共通しているのは、不必要な情報(変化をもたらす情報)の封印である。
適者生存者にとっては、どんな突然変異も、その環境下では不利なものである、新しい環境下では有利なものであっても。
進化(変化)と安定という、両者があって、つまり、変化がありながらも、全体としては安定しているという状況が維持されなければ、続いてはいかない。
注)植物には成長点があり、そこだけが変化成長する成長部位(フロンティア)である。全てが変化しては、順調な成長が望めない。安定した基盤があってこそ、その上に建て増しをすることができる。
建て増しを出来るのは最上階に限られる、それより以下の下位(既存のもの)は安定している必要がある。細胞でも、成長や変化をする部署(いま話題のips細胞がそれ)が決まっている。それはごく一部である。