真 夢人 日記

心理学、哲学、脳科学、宗教に関心があり、それらについて自分なりにまとめたものをこのブクロで発信していきます。

東京オリンピックは日本の文化能力を発揮する良い機会だ

以前(2013/08/29)に、"「なぜ国家は衰亡するのか」を読みながら考えたこと"という記事を書いた。これは、「中西輝政」氏の著者である。
その著書の中の"まえがき"で、次のような表現に出会った。
「近代において、発達した工業国家が成熟の段階に至り、いわゆる経済大国ないし先進国と呼ばれる状況に至ったとき、しばしばきわめて類似した「社会的衰弱」と呼ばれる現象に陥る」
「長期的にはつねに「上昇」と「下降」を繰り返し経験する、というが先進国の宿命」
衰退(衰弱)とはどういう意味だろうか。辞書では、「勢いや活力が衰え弱まること」だとある。私は、現在65歳である。50歳代から見れば、本当に活力の衰えをひしひしと感じる。
身体の加齢による衰退は避けようもないが、国が衰退(衰弱)するとはどういうことだろう、どうなることだろうか。少なくとも、日本の産業・工業の衰えは、実感できる。
また、「上昇」と「下降」とは、どんな面での現象を言うのだろうか。本文の中から、私には、そこがはっきりと読み取れなかった。
私は以前(2007/05/09)このブログで、「欲求階層説と個人と国家」という記事を書いた。
そこから引用。
「欲求階層は、低い段階から、1)生理的欲求→2)安全欲求→3)社会的欲求→4)自我の欲求→5)自己実現欲求と、順次高い段階へと上昇する」
「国家も個人と同様に、そして個人と同じように段階的欲求が上昇してゆく。さらに視野範囲が、個人だけから家庭へ、さらに集団・社会へ、さらにその社会を越え行く方向へと拡大する」
私達は、下位の欲求から始まって、ある程度の満足が得られたら、更に上位の欲求を満たそうと階層を登っていく。
追記)逆に、ある段階の欲求をある程度まで満足できなかったら、そこに固着(執着)するという停滞が生じがちである。
物理的・身体的欲求から、徐々に(オーバーラップさせながらクロスオーバーしながら)、心理的・精神的欲求へと推移してゆく。
しかしながら、次の発達・発展段階に登る前には必ずスランプ・足踏み・しゃがみ込み時期を通過しなければならない。それがなければ、新しい段階へは進めない。
追記)組織や国レベルでは、改革が必要とされる段階である。古い制度(システム)を脱皮することによって、新しい段階へと進める。聖書の言葉:新しき葡萄酒は新しき革袋に入れよ。
それは蛇やカニが一段と成長するために脱皮する段階を踏まねばならないようなものだ。それを衰退(衰弱)と呼ぶべきなのだろうか。
私は、今の日本は、なるほど、物理的・身体的には衰弱気味であるかもしれないが、心理的・精神的にはますます盛んになりつつあると感じるのだが。
例えば、健康だった人がベッドで寝たきりになって身体的には衰弱しても、心理的・精神的な創作意欲が盛んな人はいるが、その人は衰退(衰弱)しているのだろうか。
ということと今の文化的興隆を考えると、日本社会は、産業・工業の発展・発達よりも、文化的な方面に関心が移っていると感じられる。
アメリカのアップル社は、文化的能力、主にソフトウエアの面であるが、に主眼を置き、そこを高めて、それを、ハードウエアに搭載する。
このハードウエアは、自前で作るのではなく、設計段階まで、アイディア段階までは示すが、製品そのものは、産業・工業が興隆している国々に作らせる。という形で、自国の文化能力と他国の工業能力とを融合させている。
追記)アメリカの経済界は、金融面でそれを実行し、それが行き過ぎて、リーマンショックが発生し世界中を震撼させた。
グローバル化とは、自国をよく知り、他国をより知り、それらの長所をうまく組み合わせて、全体適合、全体最適化を目指すことだろう。
しかも、現代では、文化能力、あるいは発想能力が優位に立ち、工業能力を引っ張っている。そういう時代である。
日本は、もうそういう時代、そういうレベル、そういう欲求段階に達している。しかし、残念ながら、日本ではアップル社のように、それを、利益が出る方法を生み出すという、経済面に結び付けられてはいない。
ところで、今回、2020年のオリンピックが、東京で開催されることとなった。オリンピックも、文化能力が主体になる。これは、日本が世界に、日本文化を広く知らしめる、普及させる絶好の機会である。
私自身は、東京でのオリンピック開催に反対していた。その理由は、財界、産業界が自分達の利益を考え過ぎるのでは、コンクリートに金をかけ過ぎるのではないかと危惧するからだ。
だが、日本の文化能力を発揮する、発表する良い機会として捉え直すならば、これは絶好のチャンスだといえる。それには、トップリーダ達の意識レベルが問われてくる。オリンピック開催に際しては、日本の文化面で活躍する人々の登用、重用を期待する。