真 夢人 日記

心理学、哲学、脳科学、宗教に関心があり、それらについて自分なりにまとめたものをこのブクロで発信していきます。

試合に勝って勝負に負ける

[試合に勝ち勝負に負ける]
◎しばしば、"試合に勝って勝負に負ける"、という場面にお目にかかる。いや、余りにも頻繁にお目にかかる。所で、"試合に勝って勝負に負ける"とはどういうことなんだろうか。
[試合と勝負の二種類の戦い]
◎例えば、家庭内で親が子どもを叱りつけるときや、会社で上司が部下に叱責するときに、"試合に勝って勝負に負ける"場面にお目にかかる。ここには、"試合"と"勝負"と、二段階、二種類の戦いがある。
[実現してほしい目的]
◎これは、叱責という行為に二面あるということだろうか。まず、親や上司が叱る叱責するには実現してほしい目的があるはずだ。その目的を廻って勝負という決定が待ち受ける。
[雷を落とす]
◎例えば、子どもが明日試験だというのに、夕食後呑気にテレビを見ている。それにイライラしたお母さんが子どもに雷を落とす。"明日テストでしょ、いつまでテレビを見ているの?!"と大声を出す。あるいは、おしゃべりして仕事につかない部下達に対して、"いつまでだべっているんだ、早く仕事につけ"と一喝する。
[テレビのスイッチを切る]
◎ここでは親子の会話に話を限定する。母親の雷に対して、子どもは、"うめさいな、分かったよ"と腹立たしげにテレビのスイッチを切って、二階へドンドンと音を立てながら上がったと想定する。
[親の目的は]
◎この例の場合であれば、親の目的は、"子どもに勉強させる"ことだろう。ここで、先ほどの"試合に勝って勝負に負ける"を考えてみる。
[親は子どもに言い勝った]
◎この場合の試合とは、親と子どもの言い合いである。親の言葉に対して、子どもはスイッチを切った。この点では親が勝った。親は子どもに言い勝ったのである。でもこれで万々歳なのだろうか。
[勝負にも勝ったか]
◎では、"子どもが勉強する"という"真の目的"をも達し得たのだろうか。子どもを勉強させるという勝負("真の目的")にも勝ったのだろうか。
[勉強するとは限らない]
◎たぶん、勝ってはいないだろうと思う。子どもが自分の部屋へ戻ったけれども、そこで勉強するとは限らない。マンガを読み始めるかも、ゲーム機をとり出すかも、ケータイで誰かにメールをし始めるかも、大きな音でラジオを付けるかも、即ベッドに潜り込むかもしれない。
[行為を要求]
◎勉強をしなかったら、親は"試合(言い合い)に勝って勝負(目的)に負けた"といえる。何故負けたのだろうか。親は上司は、しない相手にさせる、している相手にさせないという逆の行為(目的)を要求するのだが、子どもには部下にはそのままの態度を保ち続ければ勝ちとなる。あるいはした振りをすれば勝ちとなる。
[子どもに有利な勝負]
◎だから、この試合、この勝負は、子どもや部下にはとても有利で、親や上司にはとても不利な戦いを強いられているのだ。たやすい戦いに打って出たわけではないのだ。相当の根性が要求される。
[自尊心の勝ち負け]
◎さらに、試合部分は、往々にして"自尊心の勝ち負け"であることが多い。自尊心には(自我)感情が必ず付き添う。自尊心を傷つけ、感情を害した当の相手から来る指示や命令に従うことはまれである。だから実際の所、試合部分で勝つと、勝負で負けることが多い。
[感情を損ねる試合はしない]
◎そういう理由から、相手の感情(自尊心)を損ねる傷つける試合はすべきではないと思う。カウンセリングは"試合をすべきでない"という。少なくとも、傷つければ、後でしっかりとフォロー、アフターケア(事後処理)をする必要がある。さもなくば、傷跡が悪化する可能性も大きい。
[試合に負けて勝負に勝つ]
◎"試合に負けて勝負に勝つ"という手もある。あるいは、"試合をせずに勝負に勝つ"方法を選ぶこともできるだろう。とにかく、目的は試合をすることでも、試合に勝つことでもないのだから。
[試合に勝つ方に力点を置く]
◎しかし、親や上司は試合に勝つ方に力点を置く余り、勝負の方を忘れている。あるいは、試合に勝たねば、勝負に勝てないと思い込んでいるのかもしれない。大事なのは、試合ではなく、勝負である。特に相手のことを思いやるならば。
[試合に関係する態度]
◎以前に"優しさ"と"厳しさ"について、このブログで書いた。優しさとか厳しさとかは、試合に関係する態度である。厳しい態度によって試合に勝っても、肝心の勝負に勝ったとまではいえない。
参考サイト→"優しさと甘やかしと厳しさと"
[試合と勝負は次元の異なる]
◎逆に、優しい態度を示すことで試合に負けたとしても、勝負にまで負けたとは言い切れない。それぞれ(試合と勝負)は次元の異なる事柄であるのだから。ある意味、試合部分は手段ともいえる。そして、勝負が目的と解せるだろう。
[見える部分で負けは抵抗が]
◎しかし、試合において、他人に、もちろん自分たち(相手と自分)に見える部分で負けるのは抵抗が伴う。特に自尊心を強く感じている者にとって。だが、勝負に勝つためには、試合部分で勝つことは意識しないことが必要だろう。
[名を捨てて実を取る]
◎商売の都、大阪では、"損して得取れ"とよく言われる。これは、"試合に負けて勝負に勝つ"と言い換えてもいいだろう。名を捨てて実を取る。肉を切らせて骨を断つ。これらも同じ主旨のことわざではないか。
[相手に何を要求するのか]
◎叱る場合、自分は相手に何を要求(目的)しているのだろうか、この方法は目的にかなうのだろうか、を考えてみられては如何だろうか。叱るのが、ケンカになったり、後味の悪さが残ったりは試合にこだわるからではないのだろうかと。