[多言語百科事典"Wikipedia"]
◎2001年に、"Sanger"氏と"Wales"氏が共同で設立した、 "Wikipedia"は、米国フロリダ州の非営利組織(NPO)"Wikimedia Foundation"が、寄付金で運営される多言語百科事典で、一般人が自由に書き込むことで、情報が次々追加されていく。
[日本語版には27万項目]
◎現在、英語版には140万、日本語版には27万4千項目が登録されている。専門家が編集する国民的辞書、"広辞苑"(岩波書店発行)の項目数約23万と比べても、量的には肩を並べる。
[1日約1500項目が追加]
◎オンライン百科事典"Wikipedia"は刻々と成長している。英語版には1日約1500項目が追加されている。世界中の無給提供者が知識を寄せ集める。私たちはそれを無料で利用できる。
[人気の高い検索ツール]
◎最も急成長中の"Wikipedia"は、ネット上で最も人気の高い検索ツールの1つである。229ｶ国で利用され、総掲載項目数は200万件を超えている。"Nielsen NetRatings"(有名な調査会社)は、一ヶ月にユニーク訪問者数は3300万人を突破し、前年同期比162％増を記録したという。
[執筆加筆編集できる]
◎誰もがネット上で執筆加筆編集できる"Wikipedia"は、不特定多数が協力し合うオンライン･プロジェクトとして最も華々しい成功例である。文字検索すると、たいてい"Wikipedia"記事が検索上位に位置する。
[信頼性に疑問も]
◎しかし、"Wikipedia"は誰もが参加できるので、内容の信頼性に疑問を呈する人もある。又、政治的に微妙な議題については論戦場と化すことも多い。
[Citizendium]
◎"Wikipedia"の創設者の１人が、ライバルとなるオンライン百科事典"Citizendium"をほどなく開設する。多数の集合知をオンラインで集約するにあたり、"Wikipedia"よりも統制したやり方(混沌にもっと秩序を入れ込む)を実現させたいという。
[専門知識を持つ編集者と依頼]
◎秩序を入れ込むために、既存の権威を借りて、執筆内容を判定する。投稿は一般開放だが、その執筆内容公開の是非は、専門知識を持つ編集者へ依頼する。また、対立する利害関係を調整を図るために、無給"保安官"を置く。
[編集過程に取り入れず]
◎"Sanger"氏によると、"Wikipedia"立ち上げから1年で辞めたのは、"Wikipedia"が専門性を編集過程に取り入れずに続けていくのに不満をおぼえたからだと言う。
[投稿者･編集者をきちんと統率すべき]
◎"Citizendium"を開設する、"Sanger"氏は、"Wikipedia"が投稿者･編集者をきちんと統率していないと批判する。例えば、"多数による合意を反映した内容が、項目の最新版になるわけではない。最もしつこく書き込み続ける人間の意見が最後は通る"、という。
[権限を与えず]
◎"Sanger"氏の離脱以降、もうひとりの創設者"Wales"氏は、 "Wikipedia"に秩序をもたらすため、色々と策を講じてきた。ただし、"編集者"のような権限を誰かに与えたりはしていない。
[理性を尊敬]
◎"投稿者同士の論争などを解消するにはどうしたらいいか"、に対して同氏は"個人の権利を強く尊重し、人間の理性を尊敬することだ"と答えてきた。
[責任を他人に任せてはならない]
◎"考え、判断し、決断する。これは全ての個人が担っている基本的な責任だ。私たちは決してその責任を他人に任せてはならない。いかなる集団にも、ブリタニカ百科事典にも、"Wikipedia"にも、誰にも、絶対だ"、という。
[資格をもつ編集者]
◎これに対して、"Sanger"氏が開始する新サイト"Citizendium"では、"現実世界の尺度に沿った、最低限の資格"("学位や学会･専門団体所属の有無など"をもとに判定)をもつ、無給提供者がサイトの"編集者"になる。
[内容を一つ一つ精査]
◎"Citizendium"が"Wikipedia"よりも優れたオンライン百科事典であることを実証するには、まだまだ時間がかかるだろう。というのは、同サイトはまず最初は、"Wikipedia"の既存記事を全部そっくり移行する。その上で、高い専門性をもつ編集者が記事の内容を一つ一つ精査していくという、実に根気のいる作業を開始する。
[平等性か階層性か]
◎"Wikipedia"は、平等性、水平的作業を重視する。個人が担う責任と理性に期待する。それに対して、"Citizendium"は、そこに少し階層性(参加自由の投稿者とその上に専門知識を持つ編集者を置く)を入れ込む。
[ある程度の秩序を持ち込む]
◎理想としては"Wikipedia"だが、現段階の現実を考えれば、ある程度の秩序を持ち込む、"Citizendium"がうまくいくのではないだろうか。
[世界的実験室]
◎とにかく、これは世界的実験室である。完全水平的(フラットな)作業で構築する、"Wikipedia"か、それとも、少し階層性(秩序)を入れ込む、"Citizendium"か? あなたはどう思われますか?
