[田中長野知事の誕生と敗北]
◎私は前回のブログで、"田中長野知事が知事選で敗北"、を取り上げた。今回は別の角度から改めて田中長野知事の誕生と敗北、そして嘉田滋賀知事の誕生について考えてみたい。
[選挙民に視点を置く]
◎その時には、選ばれた個人(知事の気質や政治的態度)に焦点を当てたが、今回は選ぶ側(選挙民)に視点を置いて話を進める。過去と現在、未来との比較において。
[政治家は企業のために政治]
◎今までの政治は政治家(プロの政治家)が政治をする、無知な一般大衆に成り代わって専門的な政治をするという形式であった。というよりも、はっきり言って、政治家は企業のために政治をしているという印象を受けた。そして国民はそのおこぼれにあずかっていたといえる。
[ボーダレスの時代]
◎話の視点を大きく回転させる。しかし今やさまざまな分野において、ボーダレスの時代である。ボーダー(border)、つまり垣根が取っ払われようとしている。
[グラデーションがかかった時代]
◎男性対女性、素人対玄人、政治家対一般市民。それそれが明確に区別されていた時代(昭和時代の終わりまで)から、昨今では男性でも、ちょっと見では、服装において区別がつかない。顔を見ても区別が使いなことも多い、男もすなる化粧である。職業的にもそうである。
[素人対玄人との垣根消失]
◎政界でも、自民党内に小泉チルドレンが大量発生したことはまだ記憶の片隅に残っておられるだろう。昨日の一般市民が、今日の政治家である。素人対玄人との垣根が消失したことを意味する。この垣根消失はさまざまな分野で発生している。
[素人のブログ発信者]
◎インターネットが普及し、数年前にブログが発明され、たちまちの内に日本全国、ブログ発信者で埋め尽くされようとしている。このように、プロの報道人と素人のブログ発信者とが混在している。もちろん今や数の上では素人発信者が圧倒している。
[自分個人の意見を主張し始めた]
◎これは今までの上からのトップダウン式(押しつけの、お仕着せの)規則･道徳に素直に従っていた市民(県民･国民)が、それぞれ自分個人の意見を主張し始めたということである。ブログだけではなく、テレビでも素人の面白さが受けている。素人に乗っ取られていると言ってもかまわないだろう。逆に、プロが素人化し始めている。
[政治の場に要求実現の通路がなかった]
◎自分個人の意見を主張し始めたが、政治の場に自分の要求を実現するチャンネル(実行通路)を持たなかった。所が、田中康夫氏や嘉田由紀子氏、最近では東国原宮城県知事が親しみやすいキャラクターと分かりやすいキャッチフレーズで庶民にアピールした。
[市民の要求を吸い上げる結節点]
◎彼らは、市民･県民の要求を(ボトムアップ方式で)吸い上げる、核、ハブ、結節点になれる人柄であったのだ。乱雑に散らばった鉄粉に、一個の磁石が投げ入れられた。磁石はたちどころに散らばっていた鉄粉を自身に吸い寄せた、きれいな波紋を描いて。
[自由参加で自律的意志による結晶集団]
◎鉄粉は自由参加で自律的意志によって結晶した集団になった。田中氏と嘉田氏はその核となった。統合されたときには大きなうねり、津波のような破壊力になるが、目標(核)をなくしたり、それが不明確になったり、そこに賛同を得られなくなったら、その集団は求心力を失って急速に自然崩壊する。
[市民による市民のための市民政治]
◎このように、核は役割交代してゆくべきものだろう、一つの目的を達したら。次々に市民の要求を吸い上げる結節点になれる人が登場するのが、本当の市民政治であろう。市民による市民のための市民政治であろう。
[今までは政治家による政治]
◎所が、今までは政治家による企業のための政治であった。そのやり方は、トップダウン式に、(営利的)組織(例えば労働組合、企業別団体、農協など)がその下部に指令を出して動かす旧方式である。下部は上からの指令を自身の意見とは無関係に機械的に動く他律的個人で構成されていた。
[結節点が大きなうねりとなって社会を動かす]
◎そのような政治家政治はだんだんと通用しなくなるだろう。それぞれの個人が次第に自分の意見を持ち、それを自発的に表明する。それを実現してくれる結節点が現れると、大きなうねりとなって社会を動かしてゆく。あるいは社会を動かすほどの世論に盛り上がってゆく。
[目標が達成されると集団は自然崩壊]
◎そしてある程度目標が達成されると、潮が引くようにその集団は自然崩壊してゆく。そしてまた次の(要求を吸い上げる)結節点が現れるのを待つ。潮の満ち引きのように、あるいは次々に押し寄せる波のように。
[潔く身を引く]
◎ある意味、小泉前首相と、竹中平蔵元金融･経済財政相の辞職は見事な幕引きであった。目的を達したと見ると、潔く、身を引く。
